兎に角

溜め込まないでシンプルに♪ リウマチからの気づき

白杖の彼

毎朝ではないが
バス停で白杖の男性とよく会う

彼は目が見えない方だ
彼が来ると並んだみなは、彼を最前へ案内する
それが当然のルールになっている

私も顔なじみになって、
(声なじみという方が正しいのかな・・)
隣り合わせのときはバスが来るまで
よくおしゃべりをするようになった

「今日はあたたかいですね」
「でも午後から風が強くなって寒くなるそうですよ」
と挨拶代わりに話しはじめたとき
彼に
「紅葉はどこか見に行かれましたか?」
と訊かれた
「いいえ、とくにどこにも行ってないんですよ。
でも、街のあちこちで紅葉がけっこうきれいで、、」
と言いながら、私ははっとして、言葉を探しはじめた
なんと言ったらいいのか、どう言えばいいのか・・
そんな私に彼は
「都内でも紅葉がきれいなところがありますよね。
紅葉は高いところから眺めるのがいちばんきれいだそうですね」
と続けた
「そうでしょうねー。上から見るときれいでしょうねぇ」
そのとき、ちょうどバスが来ておしゃべりはそこまでだった

仕事先の20階にある休憩室で
自販機のコーヒーを飲みながら外を見た
高層のビルの合間合間に
黄色や茶色、ベージュの木々が彩りを添えている
とても美しい
夏の緑とはまるで違う世界になっている
昨日まで気にも留めなかったのが不思議だ

彼の中には
いったいどんな紅葉が広がっていたのだろうか・・

目を閉じてそのことを想った